ご案内
SやC社に対する示威行為であると同時に、3棟のほとんどのオーナーたちが早期解決を願っている事情を、公共料金各社、入居者となる学生および大学、裁判所、さらには八王子市民に知ってもらうのも目的の一つだった。
名付けて「C・クリーン作戦」。
94年3月13日の第一次に60名、7月一6日の第2次には約40名が参加した。
考えてみれば、不動産所有者としてはきわめて不自然な話である。
問題が発生してからはもちろんのこと、購入以来、初めて自分の所有する部屋を見るというオーナーもいた。
その不可解さこそが、そもそもの問題の端緒である。
不動産を金融商品化したオーナーズシステムのいかがわしさを、あらためて自省を込めて感じ取ったに違いない。
何よりも呆然としたのは、C社の無法ぶりである。
冒頭に紹介した声は、第2次クリーン作戦に参加したオーナーたちの声である。
第2次のその日は、35度を超える猛暑の中、C社がエントランスに用意していた冷たいお茶を横目でにらみながら、参加者と同意書を送付してきたオーナーたちが所有するA棟のホテルとマンションを点検した。
まず、ホテル。
驚いたのは、覚書や運営を委託もしていないのに、参加者のほとんどの部屋が現実に使用されていた。
ある部屋は物置として、ある部屋はC社の従業員食堂として、またある部屋は年間契約で事務所として貸し出されていた。
物置や従業員食堂として使用されていた部屋は床などの汚れがひどく、再びホテルの部屋として使えるかどうか不安を抱かせた。
C社は裁判で、管理の状況を証拠写真として提出し、しっかりした管理を装っていた。
それがいかにデッチ上げであるかが判明した。
マンションも同じだ。
玄関はオートロック式であるはずなのに、非常階段のドアの鍵が壊れており、出入りはフリーパス。
部屋も、賃料を受け取っておらず空室のはずが、入居者の存在を示す荷物があったりした。
通路やエレベーターの汚れも目立つ・視察団はこの日、以後の無断使用を許さないため、点検した96室を封印した。
管理組合が、まがりなりにも建物の管理問題を論議できるようになっていくのは、94年(平成6年)2月28日、C棟裁判で勝訴判決を得てからである。
現場では翌95年(平成7年)2月14日、仮執行判決に基づいて、C棟専有部分の明け渡し強制執行が裁判所執行官の立ち会いで行われた。
オーナーたちは、C社が不法占拠する本丸に近づきつつあった。
同年9月25日、A棟裁判も結審。
あとは判決を待つばかりとなった状況で、95年(平成7年)2月23日に開かれた第3回定期総会。
議案害に記された「活動報告」には、C棟判決、A棟結審を受けた形で、こう呼びかけた。
「この判決(間近に迫ったA棟判決)は、ホテルもマンションも自主管理・自主運営を開始する絶好の機会となるでしょう。
施設の無惨な姿は、参加者に自主管理・運営の意識を醸成させるには十分だったろう。
もっともそれは、すぐに破られた。
一週間後、管理組合理事5人が現地を訪れ、封印作戦の点検をすると、すべての封印を剥がし再び部屋を勝手に使っていた。
一行は、それらの部屋を写真にとって、再度、封印。
写真は、C社の管理実態を示す証拠として、後日の裁判に提出された。
議案として提出した「今後の活動方針」の一つに、「マンション・ホテルの自主管理、自主運営による収入の確保と公平な分配」という形で、初めてC社を排除したあとの具体的な管理・運営の方向が示された。
それは「プール制」というものだ。
「C八王子」の問題を複雑にしているのは、ホテル、マンション、研修施設など複合型施設という構造的特徴を持ちながら、給水、給湯、電話、廃水処理などライフラインの供給は集中管理という独特なシステムが採用されており、単独での運営は難しい点にあった。
C社はホテルとマンションの分離案をしきりと持ちかけていた。
ホテルを渡すと、管理センターの占領を許し、すべての支配に繋がってしまう。
どうしてもホテルとマンションの「一元的解決」をはかる以外に道はない。
さりとて、一部オーナーがC社に運営委託している現実を認めると、ホテルの一体運営は困難となる。
解決が遅れれば当然、オーナーは収入を得られない状況が続く。
第3回定期総会の議案には、もう一つ注目すべき議案が提出された。
ローン対策である。
それは、管理組合の結束力をより強固にする重要な施策であった。
追って後述する。
第3回定期総会は、管理組合がようやく管理組合としての本来的な機能を準備しようとした総会として、過去2回の総会とは明らかに異なっていた。
ところが、それが十全となる前に、事態が急変する。
「管理組合が管理を開始すれば区分所有法に基づく新C管理規約により、賃借人が入居していなくても、すべてのオーナーが管理費を納入しなければならなくなります。
莫大な空室をかかえ、かつ係争の途中で全室を一度に満室にするのは極めて困難な課題です」そこで、マンション・ホテルを問わず、たとえ部分的であっても実収入を確保する道を追求し、管理組合の下で公平に分配しようというのがプ‐ル制の考え方だ。
もちろん経費の負担も同様だ。
いわば、相互扶助の精神である。
ここでは、「1年間に限定」しての提案であったにしても、右のプール制こそ、「カレッジタウン八王子」再建の原動力となるものだった。
あわせて一室5万円の管理開始準備金と、96年2月から管理費の徴収開始も議案として提出された。
96年(平成8年)に入って早々、C社が慌ただしい動きを見せた。
1月20日付で従業員の多くを解雇した。
事前に、退職届を提出させているという情報を入手した管理組合は、C社が現場放棄する前触れとみて、理事を動員し、交代で監視行動を開始するとともに緊急立ち上げ準備会を開催。
マンション部会、ホテル部会のオーナー約30人が東京・麹町の弘済会館に集まり、自主管理・運営の体制構築を話し合った。
話し合いは、管理・運営の新会社設立、マンションの入居者募集準備の開始の検討で意見が一致した。
半年後。
5月20日のA棟判決が死亡宣告となったのか、C社は6月10日付で「建物を退去する」旨の通知書を内容証明で弁護団宛に送付、夜逃げ同然に退去したのは、前述したとおりである。
4年余に亘る不法占拠にしては、実にあっけない幕切れだった。
ここにオーナーたちは、「C八王子」を自らの手に取り戻したのである。
だが、勝利の美酒に酔っている余裕は、管理組合にはなかった。
一夜にして姿を消したC社は当然ながら、管理・運営の業務引継という責任まで放棄して逃亡している。
管理を行ううえで重要な問題となる鍵の引き渡しも満足でない。
6月3日、C社の顧問弁護士を通じてグランドマスターキー3本が返還された。
翌13日、連絡を受けて各室の鍵を引き取りに行くと、10箱のキーキャビネットがC棟のコンクリー通路に放置されたまま。
もちろん、立ち会う人間は誰もいない。
調べてみると、鍵の本数も不足していた。
数百本のその鍵の整理をするだけでも、大変な時間を要した。
問題は、まだある。
公共料金の滞納だ。
その額、約一億円。
支払を管理組合に求めてきた公共料金4社との交渉は難航した。
管理組合は今度は、「マイナスからの再建」という難題に立ち向かわなければならなかった。
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